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【ジャーナリングブランド「CAREN」Mamo】「自分のことを受け止めてあげられる」吐き出す場所がない現代で生きるためのセルフカウンセリング術

執筆者の写真: HarukiHaruki

更新日:1月20日

費用や心理的なハードルから、日本ではまだまだ一般的になっていないカウンセリング。そんななか、ジャーナリングブックの制作を通して、ジャーナリング文化やメンタルヘルスに関するコミュニティを拡大し続けているのが、メンタルヘルスやウェルビーイングを軸としたブランド「CAREN」だ。今回は、「CAREN」の設立者であるMamoさん(@mamo_momoko)に、メンタルヘルスのコミュニティを設立するに至った経緯や、メンタルヘルスを保つために気をつけていることについて話を伺った。


メンタルヘルスに興味を持ったのは、家族の病気がきっかけ


ー現在は、デザイン業とメンタルヘルスコミュニティ、CARENの2軸で活躍されています。学生時代はどんなことをされていたんですか?


デザインを作ったり、かわいいものを見たりするのが高校生のときから好きで、大学は空間デザインを学ぶ建築系の学科に進学しました。あまり将来のことを考えていなかったので、当時は道を間違えてしまったという感覚の方が強かったですね(笑)。


ーそうなんですか!でも、現在されているデザインのお仕事にもつながっていますよね。


当たり前ですが、アカデミックとしての建築は、見た目をかわいくするよりも図面を引くといった建築的な知識を交えることが多くて。今思うと、その道に進んで間違っていなかったと思いますが、学生時代は向いていないかもと思うことの連続でした。


ー当時からメンタルヘルスについて考えることはあったんですか?


当時は、そもそも客観的に自分の状況を把握できていなかったんです……。


自己理解が足りず、何をしたいのかも分かっていないなかで、就職活動に挑みました。当然うまくいかなくて、負のサイクルに入ってしまったんです。精神科には通っていなかったけど、1ヶ月くらい家に引きこもっていた時期があったりと精神的にいい状態ではなかったと思います。


ーメンタルヘルスの知識があることを知らなかったときって、闇雲に悩んでしまうような感覚に陥りますよね。


大学を卒業して会社員として働いているときは、メンタルヘルスについて知ったり、学んだりする機会はなくて。会社を辞めて、デザインを学び始め、フリーで働くぞというときに家族が精神疾患にかかってしまったんです。


それも、自分が思っていたうつ病よりも症状が重くて、今までの性格が180度変わってしまったんです。そこから原因や治療方法を調べたりしたのが、メンタルヘルスに興味をもった最初の接点でした。


ー身近な人がうつ病になってしまうのは想像ができないです。


基本的には、ずっとそばにいるようにしていました。それは、家族のためでもあり、自分のためにも。ただ、もちろん困惑もしましたね。


付き添いで精神科に行っても、不安で先生の前で泣いてしまうくらい辛かったときもあったんですが、お医者さんが何かあったらこの番号に電話していいよ、と言ってメモ書きをくれたりして、なんとか乗り切りました。


ーCARENとしてコミュニティを作るに至った経緯はなんだったんですか?


家族のケアもあり、デザイナーとしての就職活動もままならない時期に、仕事の方向性や今後の生き方について考えるようになりました。病気の症状も落ち着いて、家族と離れて暮らすようになってからも、デザインの仕事と並行してメンタルヘルスについては1年半ほど学び続けていたんです。


そんななかで、インハウスのデザイナーとして働くのもいいけど、自分のデザインでブランドを作って活動するのもアリなんじゃないかと思い始めたことと、メンタルヘルスを広めていきたいという考えが合わさりました。


ーそして形になったのがCARENなんですね。


そうです。メンタルヘルスを勉強する機会って限られていますよね。好きなものや、自分がいいなと思ったものを人に伝えたい性格ということもあり、メンタルヘルスについてみんなに伝えていきたいと思い始めたんです。


当初は、メンタルヘルスの知識やティップスをインスタグラム上で伝えるマガジンやnoteでの発信を主にやっていました。



ー現在はオリジナルのジャーナリングブックを制作されています。メンタルヘルスコミュニティを運営するにあたり、アウトプットの手法としてプロダクトを選んだのはなぜですか?


インスタグラムやnoteでの情報発信だけでは、その人のメンタルヘルスは充足できないのかも、という気づきが大きかったです。なので、カウンセリングの資格を取って、カウンセリングのサービスもスタートしたんです。


さらに、話を聞くだけではなくマインドフルネスやセルフコンパッションなど、メンタルヘルスについての知識を伝えながら心と向き合えるプログラムを作ったりもしました。


ーすごい行動力ですね。


でも、情報を伝えていくなかで、直接自分で伝えるだけでは、多くの人に広まらないと感じました。そこで、1年前にジャーナリングブックとしてプロダクトを出しました。


やっぱり、プロダクトは情報を伝えるのとは違って説明臭くならないし、もの本体の魅力でスッと日常に馴染む感じがよかったですね。



ーメンタルヘルスに興味を持っていなかったとしても、プロダクトがそのきっかけになることもありますよね。


そうですね。そういうこともプロダクトを作った理由の一つでした。メンタルって一定期間向き合えば一生楽に生きていけるっていう簡単な話ではないですよね。


ずっと自分の心の様子を見ながら、向き合い続けなければならない。それが誰かを通してでもいいけど、できれば自分で気軽にできる環境があった方がいいと思ったんです。


自然と発せられる言葉を大切に


ーコミュニティではどんなことをしているんですか?


今までは、一定期間集まってメンタルヘルスについて学んだり、自己理解を行ったりするプログラムを組んでいたのですが、今後はブックを一つのツールとして、オンラインやオフラインで集まる時間を軸に活動しようと思っています。


入口や出口をあらかじめ決めるのではなく、ブックを持っていたらみんな一つになれるような流動性のある場所が理想かな。





ーコミュニティを運営しているうえで、気をつけていることはありますか?


ジャーナリングで書くときは、いい言葉やかっこいい言葉ではなく、自分の中から自然と出てくる言葉を大切にしています。


ー言葉とメンタルヘルスにはどんな関係があるんでしょうか。


私自身、ジャーナリングや誰かとの会話を通して自己と向き合う時間など、言葉を使った対話を大切にしています。例えば、友達が悩みを聞いたときに、その場ではもちろん友達に寄り添うけど、帰ってからもう一度そのことについて考えたときに、自分が彼女の立場だったらどう思うかなと考えたりとか。


自分に対して考える機会にもなるのが、対話の面白さだなと思っていて。SNSを見ていてもできるかもしれないけど、できるなら直接会って話したい派です(笑)。


ーそう思うようになったきっかけはあったんですか?


コロナ禍を経て、人と話すのが億劫になってしまった感覚があるんです……。話したら楽しいんだけど、一人で完結できた方がいろいろ考えなくていいから楽。その振れ幅が考えるきっかけになっていたかも。


これまでの経験からも、自分がどうしていきたいかや、何が好きかなのか、どういうことに落ち込みやすいのかを考えながら、自分自身を知っていく過程を大切にするようになりましたね。


ー日常で対話を意識するようになったり、メンタルヘルスを学んでから変化はありましたか?


もちろんあります!自分自身が明るくなったとか、ポジティブな思考に変わったとかではなく、自分の説明書が蓄積されていくと、よくない事態に陥っても動揺しなかったり、悲しい出来事をそのまま受け止めてあげられるようになりました。


今までは人にしてほしかったことが、ある程度自分でもできる力がついてきたので、そういう部分ではすごく楽になったかも。


ー自分に対する客観的な視点はどうやったらもてるようになるんですか?


モヤモヤしていることがあったら、何が今苦しいんだい?って自分に投げかけてあげる、セルフカウンセリングの視点を持つように意識しています。自分の中で分かってあげられるだけでも、楽になることはあるのかなって。


ー例えば、対人関係で悩みがあったときに、相手にもちゃんと自分の気持ちを伝えようとするとエネルギーが必要です。そんなときはどうしていますか?


すぐに向き合うことが正解じゃない場合もあるけど、自分の中だけで終わらせないことを大切にしているときもあります。


一つ、参考になるのが非暴力コミュニケーションと呼ばれる、NVC(Nonviolent Communication)。自分や相手のニーズを満たし、共感しながらコミュニケーションに臨む方法なのですが、自分がどんな感情になったかをまず相手に伝えて、こういうふうにしてほしかったとリクエストする、といったコミュニケーションができたらいいよね、という話です。


ーなるほど。今度わたしも実践してみます。では、メンタルが落ちてしまったときの自分なりの回復方法はありますか?


筋トレやランニングはできないけど、無力でも散歩くらいならできる!というときに散歩をするかな。ベッドで寝転びながらスマホをダラダラ見てしまったり、何かを見続けているのが私の場合、精神的によくなくて……。散歩だったら変化のある景色が勝手に目に入ってきてリフレッシュさせてくれるのがいいのかも。


CARENが必要なくなる日まで


ーどんな人にCARENを知ってほしいですか?


一見、大丈夫に見える人でも、みんな悩んでいることはあるし、その不安は分かることで癒やされていくことがほとんど。なので、メンタルヘルスについて考えることはみんなに必要なものだと思っています。責任感が強くて頑張りすぎてしまう方はもちろん、自分は大丈夫!と思っている方にもぜひイベントに来てもらいたいですね。


ーー日本では、カウンセリングが一般的ではないですが、今後CARENはどんな存在になっていきたいですか?


学校や会社にカウンセラーがいる場合もあるけど、基本的に日本では精神疾患のある人がカウンセリングに行くのが一般的ですよね。金銭的にも行動的にもハードルが高いなかで、カウンセリングが日本でメジャーになるのはまだまだ難しいと思っています。


模索中ですが、ジャーナリングブックの制作やジャーナリングを通したイベントの開催など、ハードル低くカウンセリングの代わりになるようなことをしていきたいと思っています。


ーただ悩みを聞いてくれる人がいるだけでも違いますよね。


解決しなくても吐き出すだけでもOKだし、それがすごく大切だと思っています。カウンセリングを通して一人の人をよくすることに時間をかけてきましたが、今後はできるだけたくさんの人にブックを届けられたらいいな。その結果、自分自身と向き合うことがスタンダードだし、かっこいいっていう価値観を広められたらうれしいです。


CARENを始めた頃と比べると、日本でもカウンセリングに対する価値観が大きく変わったので、今後5年〜10年にはもっと当たり前になってほしい。もうCARENが必要ないな、と思えるくらいメンタルヘルスやカウンセリング文化が浸透してCARENを終えられたらいいですね。


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